スチームパンク

豆を蒸す釜のバルブの数の多さからスチームパンクと名付けた。加える力加減で形や味が決まってしまう豆腐。蒸気が吹き出している。やったろやないかいと志しが昂まった。

とにかく出荷しなければならない。この一点から、袋詰したり油揚げを半日刻んでいる。他にも数種類商品がある。そして明日の仕込み。機械や器具の掃除。目まぐるしく忙しい。

返事をするのにも精一杯だ。呆れられたりもする。覚えるまでは、軍隊並なのだ。技術を身につける。しっかりやる。対応はサバイバルだ。

透明な愛

実体の輪郭だけを見て潜り抜ける。

その輪郭も仮定と確信の間をたゆたう。

そんなところに一体何があるというのか、思うままに走り回り探した結果そこに豆腐があった。季節の巡りもよかったのかもしれない。清らかな水の音を聞いた。恋心の風に吹かれた。

俺の愛した実体は輪郭だけが見えていた。

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